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第三回 照明/都市空間デザイナー 海藤春樹 Lively Life バックナンバー一覧
お金が許せば始終引越ししたい 環境から自分を変えたいんだな
Lively Life
海藤 春樹
part1
part2
part3

原宿の喧騒を抜けて、しばらくゆるゆる歩く。店が途切れ、ふと1本横道にそれて突き当たると黄色と白の壁が鮮やかな不思議な建物にぶつかった。そこが海藤春樹さんが事務所と自宅を構えるマンション。
どこから入れば、目的の部屋につけるのか、ちょっと初めはわからない。迷路のような作りの建物のドアを開けると、遊びごころが形になった部屋が現れた。そこに、待ち構えていた海藤さんの声。さあ、海藤オンステージの幕開けだ。

 
 
インパクトの強い外観に反射して自分がどう変わるか楽しんでいる
 

このマンションの中に住まいも事務所もある。変なマンションだからねここは。外観が黄色と白で……。お金さえあれば内装はいくらでも変えられるわけです。居場所は動かないじゃない?立地条件、場所と玄関など外側のところは変えようがないから、そこだけ見て買うのを決めるという感じはあるよね。 第一印象でぱっと、入ってくる気分がいいかどうかというのが大事……。豪華すぎるのは嫌だね。暗証番号を押してガラスのドアが開くというところに住んだことがあるけれど、なんか居心地が悪い。ああいうのは住いに基本的に自分がいた痕跡がないじゃない?どうもだめなんだ。机だとかは少しずつ傷がついてきたりすることが、時間の中で対象を好きになったりしていく部分だと思っている。そういうのがない建物が多いでしょう? そういうのはどうもいやだな。家もそういう部分があるやつがいい。あまりつるつるぴかぴかではなくて、「適当に変えるぞ」みたいな……。この部屋だって何回改装したかわからないけれど、適当にやってしまう。僕はお金が許せば、始終引っ越ししたいよ。環境を変えたい。飽きるじゃないですか。年とってくると、自分からはなかなか変われなくなってくる。そうすると、外側を変えればいい。それだったら車を変えようとか洋服を変えようとか、そんなことですめば、できれば何回もしたいよね。家は車ほどには変えられないし、車は洋服ほどには変えられないわけです。リッチならばそうしたいけどね。すごいものを持つというよりも……。

逆にインパクトの強い外観に反射して自分がどう変わるかというのを楽しんでいる。引っ越し好きだって言われるけど、「夜逃げって言ってくれよ」みたいなものだよ……。僕も一応デザイナーということになっているのだけれど、本当はデザインが嫌いなの。デザインは本当は悪いことだと僕は思っているんだよ。だって、自分の趣味を押しつけて金を取るなんて、悪人以外の何者でもないでしょう?でも、デザインをしないとモノができないから、それならいっそはっきりしているものがいいと思う。妙にみんなに愛されようとしていないものね。この建物は、もう亡くなってしまった坂倉さんという建築家がつくられたのだけれど、もう「こうだぞ!」という感じが伝わってくるでしょ?「好き嫌いは知らん」という感じ。それがいいような気がする。
中道を行くなら、逆にデザインしないほうがいいね。そおっと殺すよりは、ばしっと殺したほうがいいという……。でも、その中に一生懸命自分の痕跡を残しておく。そういうふうにしてやっていくしかないんだろうね。人間、困ったものだね。インドの歌で「人を殺しながらお寺を回る」というのがあるのを知っていますか?人を殺さないと食べられないから殺人を犯す。でも、お寺を回らないと罪が消えないから、殺しながらお寺を回るという歌。まさにあれだね。人間というのはしようがないね。

 
 
もっともっと自由度のあるマンションを売ればいい
 

家は調子に乗ってすぐに買っちゃうんだ。趣味とは言わないけど、実は家を七、八回買ったんです。言うに言えない事情がいろいろあってさあ(笑)。買わないと家って直せないじゃない?壁を取ったりして、好きにいじるのはおもしろいよ。マンションは、もっと自由度のあるものを売ればいいと思うんだよね。これからスケルトンにして売って欲しい。みんなそう思っているから、きっとそうなるよ。幸いにしてというか、日本は昔よりわりあいに金があるわけで、そういうことができる時代になったよね。そういうことをいろいろ考えていくと、いまのマンションはお節介だよね。「うるさいんだよ。デザインするな」と言いたい。「設備と壁と床と天井だけ張っておいてくれ。あとはやるから」といつも思うんだよね。その分、値段を引いてくれればいいじゃないか。実は、マンション業者と組んで、そういうことを今度やろうと思っているわけ。家はなるべく自由で、買ったときは何もないのがいい。日本でも最初の設計から相談しながらつくっていくマンションが流行っているでしょう?でも、あれはちょっとうそくさいところがあってさ。だって、素人は相談といったってわからないじゃない?というのは、その人がたとえば白い部屋がいいと言ったとすると、ばか正直に全部真っ白にしてしまったら病院みたいで変でしょう。そのときに真意をトランスレートしてくれる能力のある人が必要なんだ。そういう人が大事なんです。いまはマンション業者とユーザーの間に、そういう人がいないのよ。だから、相談といっても何種類か資料を持ってきて選んだりするでしょう?どれもいやだったりしても、見合い写 真を見ているようなもので、どれか選ばなければいけない。真面目な話だけれど、それをいま構築しているんだ。エンドユーザーには負担がかからないで、もうちょっと効率よくお金が使える。しかも満足度が高ければいいわけで……。うまくいくかどうかわからないけれど、ちょっと考えている。それは大建築家はやらないから、僕がやろうかなと少し真剣に思っている。

 
 
空間は持てたらリッチ でも命がけはやめようよ
 

家なんて大げさに考えないことだね。命がけで買おうと考えるからつらくなるんだよ。一世一代なら家なんか買うのはやめたほうがいい。ほかのことにお金を使ったほうがいい。だって、どうせ死んじゃうんだから。思い詰めなければ、家を買うのはおもしろいね。車と同じだよ。せめて車を買うくらいの気持ちでいられるなら、空間は持てたらリッチだから持ったほうがいいと思うよ。全貯金をはたいてあまり一生懸命やるものじゃないんじゃない?こういうホームページで言うことじゃないかもしれないけれど、でも、そうなんだよ。余裕のない人間に、そんなこと言ったら殴られちゃうでしょう?自分がやらなければいけないことの、たぶん優先順位みたいなものがあって、その中で、家を買うことがあまり突出して1位 になっちゃうのはどうもね。だって、基本的には、どっちみちなんでも遊びなんだもの、自分の家を買うのも。逆に言えば、遊びなんだからもっと自分の好きにやったほうがいいんじゃない?みんなダイニングとか応接間が必要とか言うけれど、お客なんて年に何人も来ないよ、そんなの。ナンセンスだよ。「だれがいつ座るんだよ、このソファー」とか、あるじゃない?少年野球大会のトロフィーなんかが飾ってある応接間とか。そういうのはナンセンスでしょう?たまに人が来たときに応接間になるところがあればいいわけだ。そういう意味ではフレキシブルな空間にしたほうがいいよ。
とにかく日本は狭いのだから、変化しやすい建物がいい。なんとか風味にしないでさ。だっていくら、コピーしたって女にもてないんだもの。だって、キムタク風味とかじゃだめでしょう?風味を演じていて、そこに本人がきちゃったら、つらいじゃない?そういう状況を想像するといやなんだ。だって、本物がいたら本物のほうがいいでしょう?だから人間、初代とか一代限りというのがいいんだよ。あちこち手を出して、嫌われたりバレたらやめる。僕も、もうちょっと生きれば、人生は終わっちゃうからさ。もうちょい、もう一息。おっとっとっととって揺れながら、逃げ回っているんだ。
(構成/文 メディアム 成田恵子)

 
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桐島ローランドとの往復書簡
桐島ローランドとの往復書簡
■海藤春樹から桐島ローランドへ
あいつは特異な人生だからさ。でも、よく素直に育ったよね。ニューヨークに行ったのがよかったのかな。日比野君たちとかいろいろな人に会って、あまりさぼっているわけにもいかないなと思ったんじゃないの?ただの女好きになってしまうかと思っていたら、けっこうそうでもなくて、偉いなと思った。
あいつ、写真がうまくなったよな。また連絡してみます。ローリーとナンパ行こう。僕と一緒に飲みに行ったら最高ですよ。
■桐島ローランドから海藤春樹へ
所有ではなく試用が好き、と。そう言っていましたね。それはたしかにそうだろうな 。いいこと言うなと思った。でも僕はピュアだからね、不倫はしないよ。今度、一緒に飲みに行きたいな。僕の憧れの銀座のクラブに連れて行ってもらわないと……。まだ、銀座はデビューしていないんです。インテリな会話ができる女の子に会ってみたい。素敵な会話をゴージャスなところでしたいという夢があるんだ(笑)。たぶん勝手な思い込みなんだけどね。でもお金がないので、一番高いところに行く時には海藤さん持ちで……。そのかわり、いつでも写真を撮ってあげるからさ……。世の中はまた物々交換の時代になると僕は本当に確信しているので、さっそくそれを彼で試させてもらいます。(自分で撮った写真を見ながら)彼はいい目をしていますよね。
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