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第四回 指揮者 大友直人 Lively Life バックナンバー一覧
どこへいくにも時間が読める快適さ 都心に住んでみてその便利さを痛感
Lively Life
大友直人
part1
part2
part3

赤坂のお屋敷町の坂を登る途中に、大友さんのお住まいがある。もとは外国人用に建てられたマンションだということで、部屋のつくりの何もかもが広々と作られている。全面が窓になっているリビングから見下ろす風景に開放感があふれ、こだわりの御簾がかかる。
奥様が建築家だということで、インテリアは全て任せているとのこと。余分なもののない、ゆったりしつらえられた空間で、お茶を飲みながら、ご夫婦でおしゃべりをするのが至福の時だという。
お二人の本当にリラックスした仲のよさが、この住まい全体から伝わってくる。そんな素敵なお部屋にお二人は住んでいる。

 
 
妻の母や祖母から譲り受けた宝物があるリビングが仕事場に変身
 

この家にあるものの中で、特にご紹介するとしたら、この譜面台と、パッチワークの絵でしょうか?譜面台は、妻の母親がバイオリンを習っていたイギリスの先生から頂いたものをまた譲り受けたんです。どっしりとしていて、なかなかいいですよね。

 
 

この絵は、妻の祖母、エドリカ・ヒューズが作ったものなんですよ。これはパッチワーク絵というものなんです。手前味噌になるけれども、ちょっとオリジナルで、なかなかすばらしいですよ。私達が想像するパッチワークとちょっと違うでしょ。妻が子供の時着ていた洋服の切れ端とかが、たくさん入っていたりします。見ていただくとわかるけども完全に絵なんですよ。もともと彼女は壁画をやっていた。だからこれは近くで見るとわけがわからないモザイクのような模様だったりするのですが、ちょっと距離をおいて見ると絵全体がすごく浮き上がって見えるんです。

いつも仕事は、リビングのこのテーブルですることが多いですね。本当は一番大きな個室を、勉強用に確保してあるのですが、どちらかというとこの場所が好きですね。集中したりするのは割合どんな場所でもできます。でも、ここが一番落ち着くんだな。普通 、演奏会ごとにスケジュールが決まっていて、上演する曲目が決まると楽譜を自分なりにチェックして下勉強しておかないといけないのです。曲によって時間がかかる時もあって、長い時は、一日中勉強をしているということもあります。書かれた譜面を、最終的には一応全部暗譜できるぐらいまで自分の頭に入れ込んでいかなくてはいけないのです。その音楽がどういうふうに出来上がっているのかということを自分なりに全部チェックして行く作業なのです。だから、自分自身をコントロールしながらやるのですが、この調節が難しいんですよ。

家にいるのは好きだし、ホッとします。家はやっぱり、間違いなく、くつろぎの場でしょう。ここで夫婦して話をしていたら飽きないですよね。別に何を話すでもなく、同じ空間でそれぞれしたいことをしていることもあります。だからまあ、妻と二人で宵っ張りで大変ですけれどね。結構おしゃべりなんかしながら…。でも、僕はお酒を飲まないからお茶とか飲みながら遅くまで起きているんです。
この家のインテリアは全部妻の手によるものです。だから責任は妻にあります(笑)。彼女がただ気にいったようにやってるんでしょうね。

 
 
2人が特注した丸テーブルは団欒に集いに大活躍の優れもの
 

この丸くて大きなテーブルは、特注品なんです。妻は六人兄弟で家族が多い中で育ったんですよ。弟が二人いるでしょ。妹がひとり。それで、双子の妹と姉がいて六人。そういう家で毎日食卓を囲めばこの位の人数用のテーブルになるわけです。要するにそこの家でこういうテーブルで育ったんでしょうね。だから、結婚した時に同じようなテーブルをオーダーしたのです。使ってみたら、皆が向き合えて、便利だということがわかって。だから重宝しています。お客様もよく来ますからね。そんなしょっちゅうってわけではないんですけど、友人がワイワイくるんです。うちでパーティーをやると大変なんですよ。お客様が来ても、何も準備ができていない状態で、平気で手伝わせたり。有名なんですよ。お客様が来てから、手伝わされる。だから、ベテランはね、必ず遅れてパーティーに来るわけ。
それから、あの窓にかかっている御簾も妻が京都で作ってもらったものです。たまたまホテルの隣に作っている店があって、うちの窓枠の幅が普通の仕様と違うので、オーダーしました。

実はね、最初はこんなに長くここに居るとは思ってなかったんです。本当に仮住まいのつもりで。だから、恥ずかしい話ですけども、いわゆる音楽室っていうのを持ってないのですよ私は。やっぱり音楽をやっていると音楽室って必要なのですよ、本当に。ピアノも弾きますし、いろいろ音も出しますからね。ですから、そういう私のいわゆるスタジオっていうか勉強部屋は、いまだにそっくりそのまま実家にあります。それで本当はもう少し適当な、いいところが見つかったら、そこにちゃんとそういうスタジオを作るつもりだったのですが、結婚してとりあえずここに住んでしまったら、無精者でそのままになってしまいました。自分の部屋には、それこそ電気ピアノを置いています。やっぱり音は問題でしょ。遮音が悪いんですよこの建物。だから全然音楽家らしくない家ですね。

次に家を建てるとしたら?うーん。僕は建たないんじゃないのかと心配しています。すごくこだわりがあるから。のめり込むとどこまでも行くことが、妻の場合には分かっているんです。すごいんですよ。だから、わざとそこは避けて、無関心でいくとかね。やるかやらないかだね。ただ、彼女の造る家っていうのは絶対ないんじゃないかな(笑)。

 
 
マンション選びのポイントはロケーションと足の便のよさ
 

6年前に結婚してどこかに部屋がないかと探していたときに、知り合いが持っていた部屋がたまたま空いているからというので、気に入ってここにしたんです。ここは外国人向けに作られたマンションの4階で、ちょうどうまい具合に坂の中腹にあるものですから目の前が全部開けていて、眺めはかなりいいです。ちょうど目の前は何もありません。それで見晴らしがすごくいいんですね。それと、すごく明るいんですよ、南向きなんでね、本当のこというと熱すぎるぐらい。午前中なんか本当に家の半分位まで日がさしてきちゃいますから。

私は初めて赤坂近辺に住んだのですが、ここは住宅街ですね。おもしろい町で、赤坂見附のほうは飲食店街、繁華街です。ここに少し近くなってくると、住宅街になる。でも、最近はマンションが多いですね。ここ二、三年で急に新しいマンションが建ち始めました。それまでは比較的古いマンションが多かった。この建物もとても古いんです。実は30年ぐらいたっているのではないでしょうか。重厚な感じでつくられているマンションです。この界隈は古い一軒家と古いマンションが混在していて、そういう意味ではちょっとごちゃごちゃしています。もとはお屋敷町だったということですが。
このマンションを選んだポイントをあえて言えば便利さ、ロケーションです。都心にあるので、足の便がいいこと。これが大きかったですね。あとは、ある程度の空間というか広さもほしかった。家を探すプライオリティでいえば、都内に住むのであればやはりロケーションでしょうか。もともと私の実家は豊島区の雑司が谷。豊島区の文教地区でそんなに悪いところではないんです。そこは一軒家で庭もあってごく普通 の家ですが、わりあい便利で、何不自由ないんです。でも、たまたま赤坂に住みましたら、こんなに違うのか!と思うほど便利さが違うんです。というのは、都内であればどこに出るのもだいたい30分あれば済んでしまう。東京は混雑していて、道の事情があまりよくないでしょう?だから、距離的には雑司ヶ谷はそんなに遠いところではないのですが、混む道があるんです。車で移動することを考えると、距離は近くてもすごく時間がかかってしまうということもあります。赤坂近辺はそういう意味でどこへ行くにもだいたい時間が読める。これは非常に便利です。ですから、1日のうちにいくつかのアポイントメントがあっても、空いた時間に家に帰って着替えられるとかシャワーを浴びられるという便利さは非常にあると思います。

 
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アフターショット
アフターショット

カメラマンの桐島ローランド氏とゲストの大友直人氏

■桐島

写真はいくらでも時間をかけて撮ろうと思えばできるんです。ところが、それやると被写体も疲れるし、周りも飽きてしまう。そのバランスがどうしてもあるじゃないですか。どこまで引っ張っていっていいのかというのが意外とすごく重要。こっちの言葉も大切になってくるし、けっこう心理学なんです。被写体の表情を伺いながらやっていかないといけない仕事なんですよ。
そこで、自分の世界にこだわって相手にフラストレーションを与えるのか、それともとりあえず気持ちよく現場をパッパッと終わらせるかという、かけ引きがあるんです。そこがいつも難しい。やはりテンションというのがあるじゃないですか。その人の調子もあるし自分の調子もある。それは本当にコラボレーションだから。

■大友

僕のわずかな経験で言いますが、写真は撮る人によってすごく違いますね。僕は写真家の方のことは何も知らないけれど、ものすごい鋭い感性の世界だと思うんです。かなりシャープというかデリケートな、しかも瞬間的な反射神経みたいな感性が必要だと思うんです。ある時、演奏会を写真家がステージの横から撮ってくれたことがあります。そうすると、撮る人によって同じ被写体でも全然違うわけ。一人の指揮者なら指揮者、ピアニストならピアニストをとらえて連続写真を撮れば何十枚、何百枚と出てくるでしょう?結局そのカメラマンがその演奏家のどういうところが好きなのか嫌いなのか、どういうふうにその人を感じているかというのが出てきてしまうんですね。これがおもしろくてね。「僕ってこんなにさえない顔をして、こんなに硬い感じでいつも音楽やっているのかなあ」と自分が情けなくなってしまうこともあるわけです。そうかと思うと、けっこういい表情をして、「ああ、やっているんだなあ」と自分がまた自信を持てるように撮ってくれる人もいるんです。それはまさに撮っている人の感性というか……。僕にとっては、自分がいかにつまんない、魅力のない表情をして、情けない姿でいるかということが、はからずもわかったりするわけ。

■桐島

今日僕は、とても聡明な感じがするって最初に言いました。僕は基本的に撮影のときに相手と話すのは好きじゃないんです。なるべく何も言わないままで、ましてほめたりするのはいやなんです。たまたま自分が日本人なのかもしれないけれど、単純になんか照れくさいじゃないですか。たまに友達のカメラマンの撮影現場に行くと、「美しい!」なんて平気で言っている。そう言えるのがうらやましくて……。おれにはできないといつも言っているんです。
ただ、リチャード・アヴェドンという名カメラマンがいて、彼はとても心理学を得意としていて、要するに、人を自分のペース、術中にはめてしまうプロだったんです。彼はすごく陰湿な人で、ある意味では被写体に意地悪をするのです。優しい言葉なんか一切なしで。それどころか、ある作家に「あなた、そういえばプードルを飼っていませんでしたっけ」と聞いて、作家が「はい」と答えると、「私、きょうたまたまあなたの家の前を通ったらプードルが轢かれてたんですよねえ」なんて平気でうそをつく。そのときのリアクションの顔をパッと撮るんです。彼は完全に考えてやっていたというのです。

■大友

おもしろいね。

■桐島

そこまでおれはやる気はない。今日は、そういうオーラを感じたから口にしたんです。僕も別にまだ大友さんとちゃんと話したわけではないから、後でもしかして一緒に飲みに行ったら、「なあんだ。だまされた」みたいなことがあるかも(笑)……。だけど、そこがおもしろいと思うんです。写真は別に真実もくそもないから、そういう意味ではとてもおもしろいものです。

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