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東京にこんな水辺があるなんて……。そして信じられないくらい素敵な眺望を一人占めすることができる部屋があったなんて……。大きな窓からは、レインボーブリッジが望め、夕陽に染まる富士山を東京タワー越しに見ることができる。なにより、川と合流した海辺の雰囲気がなんともアーバンな世界観を造り出す。そんなロケーションに抗わないように、部屋の中には何も置いていない。究極のシンプルだ。「スタジオとして貸しています」りゅうじんさんは、そう言うけれど、ここには本当に何もいらない。景色がいちばんのごちそうなのだ。 |
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住まいが分散していると、とてもロスが多いんです。本と服はだんだん事務所の近くの部屋に集結してきました。国際ドサ回りで、いつも荷物を持って…。ずっと旅人のような生活です。鹿児島から帰ってきて東京に1泊して、秋田へ行って戻ってきて香港に行って戻ってきて、東京に2日いたらアメリカに行ってとか、そんな感じです。 一定しているのは、インターネットのメールアドレスとあとは携帯電話です。だから、メールのアドレスと携帯電話が居所がわかる本当の住所みたいなものなんです。仕事の中心としては商業開発研究所レゾンという事務所があります。
もっとゆっくりしたいですね。喜んでいろいろな仕事を引き受けてやってしまったりしたので、それがために本当にさまざまなところに行かなければならないんです。
学生時代に海外旅行の添乗員のアルバイトをしていました。すごく気をつかう。あれはキツイ仕事です。帰ってきたら二度とやろうとは思いません。でも、また行くんですけどね。ちょうど円高でみんな海外旅行に行けるようになったころですが、昔はツアーには添乗員を必ずつけなければいけなかったのです。それで少し英語ができる、若いのにフケているとっちゃん坊やで若年寄りみたいなのが添乗員をやらされて、そのお陰であちこち行かせてもらいました。だから、その当時からホテルに関しては裏も表も詳しくなりました。添乗員も一緒にラゲッジダウンをやらなければならなかったり、部屋が取れていなくて近所のホテルを走り回ってお客さんの部屋を取ったりすることだってありました。その後も「ザ・ホテル」のホテルインスペクターをやらせてもらったり、本当にこれだけホテルに行っていると自然と詳しくなりますよね。 ホテルの上手な使い方は、各地域に何かと自分のこともわかってもらえる常宿を決めて行くことです。次に、別に高級なホテルではなくてもホテルの使い分けをすること。ビジネスのときとプライベートのときとか。一つ星とか二つ星でもいいホテルはたくさんありますから。朝まで遊んでいてそのままちょっとだけ荷物を預けるようなホテルだったら、シャワーだけでも十分じゃないですか。それはそれでヨーロッパにはいいホテルがあります。日本はなんでも高級ホテル、シティホテルがいいと思っていますが、全然そんなことはない。 |
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いわゆるペニンシュラとか有名なホテルで好きなところはあっても、いままでで一番感動したのはニースの名もないホテル。飛行機が取れなくて駅前の本当に観光案内所みたいなところで紹介してもらった二つ星のホテルに行きました。もちろん部屋に風呂もなくて、シャワーはフロアに一つの共用です。でも、すごくいいホテルだった。 それまで仕事でパリやモナコに行っていて感じた「いかにも」というサービスではなくて、名もないホテルですが、なんかみんなが一生懸命に仕事をやっているんです。そのホテルでのことです。冬なのに夜になったら蚊に食われました。それで「蚊がいる」と言ったら、寝ていたのに起きてきてくれて虫さされの薬や蚊取り線香みたいなものを出してきてくれたりして、すごくほのぼのした雰囲気なんです。働いている人たちも、みんなすごく笑顔がよくて。二つ星ホテルなのに、なんかすごく心温まるサービスがありました。日本では高級ホテルばかりがいいと思っていますが全然そうではない。逆にそういう発見があったときにすごく楽しいですね。
旅の多い私にとって、ホテルは基本的に住まいですから、感覚的には使い勝手がいいか悪いかが大切です。でも、自分でもよくわからないのはちょっとしたことでホテルを変えてしまったりすることがあるんですよね。たとえば大阪に行ったときは父もメンバーだったある老舗の有名ホテルをずっと使っていたのですが、それを変えてしまいました。ちょっとしたことが原因なんですけれどね。たまたま行ったときに、自分が泊まる部屋にごみがバラバラッと落ちていたんです。別にそんなのはたまにあることだから、仕方がないと思いました。でも、挨拶に来た人の対応がすごくマニュアル的だった。それがいやな感じだったので、それ以来変えてしまったんです。シティホテルとかは、それなりの値段だし、みんながフルサービスを望んでいるというのはあるのじゃないでしょうか?蚊がいる二つ星ホテルでも、いやにならないんです。普通は蚊がいたらいやじゃないですか。風呂もないしね。それでもそのホテルが好きになってしまうこともある。結局トータルな価値と価格のバランスなんです。 |
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国内旅行をする人が最近増えています。増えているにもかかわらず、それぞれのアイデンティティを追求する街が日本には少ない。いまは旅館なども経営が大変だと言っているけれど、地方に行って東京のホテルと同じようなホテルがあっても興味が湧かないし、中に入っているレストランも中華料理と適当なイタリアンみたいなものがあって、カフェがあってとみんな同じ。そんなところへ行ってもおもしろいはずがないですよね。 それこそ、京都の俵屋とか炭屋とか柊屋とかは、新しい物も京都風にアレンジしている。カーテンなども自動で開くしくみになっていて、それが瓢箪みたいなスイッチカバーが付いている。そういうハイテクの導入の仕方も考えられている。高い宿泊料金もトータルプロデュース料の代価として払っているわけです。値段は、納得するだけの価値があるかどうかで決まるわけです。 地方の旅館やホテルは、東京離れというかアメリカ離れしたほうがいいと思います。アメリカや東京みたいになろうと思わないほうが、ずっと価値を高めます。同じである必要はなくて、たとえて言えば、昔ながらの和風旅館につながる螺旋階段を1周回ったような感覚のつくりがあればいいと思います。 最近、古い家具とか和もの雑貨がはやっていますよね。別に和とか洋とかを意識するのではなくて、かわいいとかおもしろいで別にいいわけです。私は幼稚園児の頃からずっとサスペンダーをしています。能の衣装でシルクのかずら帯というのがあります。その帯で、なんとサスペンダーを作っていただきました。京都に長艸(ナガトク)敏明さんという皇后陛下のお着物の刺繍もしている有名な方がいます。その先生が東京の和光で能のかずら帯ばかりの展覧会をしました。そのときにたまたま冗談で「これをサスペンダーにしたらいいじゃないですか」と言ったら、先生は最初、ムッとなさり、サスペンダーなどにできるかという感じでした。ところが、奥さまが「おもしろいじゃないの、あなた。やってみなさいよ」と言ってくれたのです。宮内庁御用達のサスペンダー会社の谷渡り人物印という会社があって、そこの社長さんもたまたま知り合いだったのでお引き合わせをして、両職人の力でそれができてしまったんです。私は2本いただきましたが、1本おそらく100万円以上すると思います。はっきり本当に美しい。室町の頃からある文様ですが、全然古くない。まるで幾何学模様みたいです。いま見ても、だれが見ても色合いといい、とてもオシャレです。和洋折衷のブッ飛んだことをしてしまったのですが、まさにフュージョンというのはこういうことを言うのでしょうね。 (構成/文 メディアム 成田恵子) |
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